学校の授業以外に、予備校や塾の利用を考えている生徒さんは少なくないはずです。両者は学習指導のサービスを提供する施設という点では共通していますが、実はそれぞれ異なる性格を持っています。学力向上や受験対策の必要性を感じていても、塾と予備校のどちらに通うべきか、迷う人もいるかもしれません。
以下にその違いを説明するので、参考にしてください。なお、ここでいう「予備校」とは、大学受験のための進学予備校を指し、司法試験などの資格試験予備校は含みません。
大学受験のための予備校、学校の定期試験対策や補習を行なう塾
予備校と塾では、まず目的が違います。予備校が志望大学の合格を目的としているのに対し、塾では学校の授業の補習や不得意科目の克服、定期試験対策などに重点を置いています。もっとも塾のなかにも受験生を対象とした進学塾もありますが、むしろそれ以外の目的で通塾する人が多く、利用者の年齢も小学生から高校生までさまざまです。一方、予備校の利用者は、自ずと大学入試を目指す高卒者か高校生になります。
指導方法にも違いがあります。予備校では、講師が大人数の受講生を前に講義を進めるスタイルが一般的です。塾でもこうした集団指導方式が採用されることがありますが、むしろ少人数制や個別指導に塾の特色があります。当然、塾のほうが講師と受講生との距離が近く、疑問点があればすぐに質問できる点が強みです。これに比べると、予備校は受講生と講師とのコミュニケーションが取りやすい環境とはいえません。講師から一方的に進める形で講義が行われるため、生徒が受講中に疑問点を質問したり、問題演習を実施することは基本的にないといってよいでしょう。
また、予備校講師は講義しか行ないませんが、塾講師は授業だけでなく進路指導まで受け持つ点も違います。ちなみに予備校で進路指導に当たるのは、チューターなど講師以外のスタッフです。そもそも予備校講師と塾講師とでは雇用形態が異なり、前者は多くの場合、予備校と契約関係にある個人事業主であるのに対し、塾講師は正社員もしくはアルバイトになります。個人事業主は、いわば受験のプロであり、教え方のうまい、人気講師も少なくありません。
一方、塾では社会人だけでなく、アルバイトの大学生もいるため、必ずしも指導力や授業の質が高い人ばかりでないのが実情です。
予備校それとも塾、通うならどちら
予備校と塾、それぞれの特色や違いを把握できれば、生徒や受験生も自分がどちらに通うべきか、自ずと答えは出てくるでしょう。
大学受験に特化した予備校では、各大学の過去問や出題傾向の分析、受験対策の研究が進んでおり、それら豊富かつ信頼性の高い試験情報に基づいたカリキュラムを用意しています。受験生としては効率的な受験対策が可能になり、得点を稼ぐノウハウも学べるので、特に難関大学突破を目指す人におすすめです。ただ講義に出席するだけの受け身的な利用法では、レベルの高いほかの予備校生に後れを取ってしまいます。カリキュラムにしたがって、自主的かつ計画的に学習に取り組めるだけの自己管理力のある人でないと、成果は上げにくいのが予備校です。
また予備校の講義は、基本的な学力が備わった受講生を対象としているため、高校の履修内容を十分に理解していないと、ついていけないかもしれません。その場合は、塾を選ぶべきでしょう。塾なら受講生の理解度を見ながら指導してくれるので、基礎学力を養えるからです。
また塾は予備校に比べ、講師との距離も近いことから、学習計画を立てるのが苦手な人、自分のレベルの合ったきめ細かな指導を受けながら、受験に備えたい人に向いています。
まとめ
予備校と塾の相違点をおおまかに紹介してきましたが、さらに個々の予備校や塾を調べると、それぞれに特色や違いもある訳です。なかには予備校的な性格を持つ塾や、塾的な要素のある予備校もあるでしょう。
数多くの予備校や塾のなかから、目標達成にふさわしい通学先を探すとなると、選択に迷うかもしれません。その場合は、候補先の見学や、体験授業の受講をおすすめします。現場での授業の進め方や、指導内容を確かめることで、自分に適した予備校や塾を見つけ出す近道となるでしょう。